…があったんですけど、多分来た方もびっくりされたでしょうねえ…
***
さて、ちょっと具合が悪くて臥せってました。3日ほどほぼ起きている時間が無く、今日から出勤。幸いインフルエンザとかではなかったので、実家で厄介になっていました。本当に身内とはありがたいものです…。ネットからも落ちていたんですが、その間文章読んでいただいた方もいらしたようで、これも本当にありがたいことです。癒されます。
…まあ、もともとちょっと、疲れていたんでしょうか。
疲れているときや弱っているときって、昔から慣れ親しんだ世界が恋しくなるみたいです。私の場合はそれが洋画や小説なんですが、最近読んでいるものがこちら↓

『終戦のローレライ/福井晴敏 著』です。全部で4冊。第2次世界大戦、終戦間際の日本の終戦のあり方をめぐる、日本人同士の攻防を描いた話です。勿論、直接に対決するのは、アメリカ海軍だったりするわけだけれども。
福井さんの作品は、『川の深さは』と『亡国のイージス』がとても似てたけれど、ローレライはそうでもない。
一冊目の最後でもう、ひどく、泣けて……
文も話作りも上手い。でも、そんなところに泣けるんじゃないのね。征人っていう17歳の主人公が激戦の中にあって、「戦争で命を賭ける意味ってなんだろう」ということを追いかけることがテーマなんだけど、そのことに精緻な文章で、インパクトのあるエピソードで引き込む。だから感情移入して自然と泣けてしまうんですよ。
例えば、泣けてしまった一冊目の最後のあたりをご紹介すると。
征人という海兵は、なんてことない青年なんだけど、ちょっと特技があったために、ある特殊な任務の重要なファクターとして潜水艦の補欠乗員になるのね。潜水艦に乗船する前に、その特殊な任務をどうしても妨げたい米国の戦闘機と、乗組員を積んだ小船の戦闘になるんです。ベテランの乗組員のひとりの仲田が、小船に積んだ機銃一本で戦闘機に応戦するんですが、征人やほかの乗組員を逃がすための時間稼ぎに、戦闘機と戦い続けて仲田ひとりは小船に残る。そのときの、征人のこんな気持ち……
『
なぜだろう。なぜ笑えるのだろう。仲田も、あの出征兵士も、自分と違って死を受け入れるに足りるなにかを持っているからか?守るべき家族、妻子。帝国軍人としての尊厳。そうしたものを胸に抱いていれば、死も笑って甘受できるということか?軍人の本壊を果たし、英霊の一端に加わる己の命を了解できるのか…?
わからなかった。わかるのは、その笑みがひどく寂しげだったということ。チョコレート、甘いぞ、そう言った時の声と、死ぬんじゃないぞ、と言った時の仲田の声が、まったく同じ調子だったこと。チョコレート甘いぞ、若いんだからお前食え。死ぬんじゃないぞ、若いんだからお前は生きろ。その瞬間には報国の理念も一死奉公の精神も関係なく、ただあたりまえの大人として口にされたのだろう言葉が、爆音をおしのけて頭の中に反響した。腹の底が熱くなり、征人は無意識に両の拳を握りしめた。
いいのか、それで?
』(『終戦のローレライ/福井晴敏 著』1巻、P216~217)
……言葉も無い……
新兵として放り込まれ緊張してたところに、当時貴重品のチョコレートをくれて優しくしてくれた。でもろくに話したことも無い、会ったばかりの相手。それが、当然のように笑って自分を助けて死んでいく。奥さんだって、子供だって、居たんじゃないのか。なのに助けてもらった自分は役にも立たず、いくら国のため任務のためとかいったって、何のためにこんな危険な目に合うのかさえ、皆目見当もつかない。一体あなたはどうして、と声を嗄らして叫びたい気持ちが、匂ってくるではないですか。
もう本当に、ひとつをとりあげてもこんなに熱くなってしまうほどだから、これは良い本だと思う……消費する本じゃない、人の心の中に何かを訴えて残す、それだけの力のある話だと、私は思います。
変なところもあるけどね。米潜水艦3隻をテストのための捨て駒に使うってホントにありなのかなぁ、とか。
でもやはりお話ってね。「これを訴えたい」という作者の裂帛の気合を感じる作品と感じない作品って確かにあると思うんです。終戦のローレライには、読者を否応無く引きずる力を私は感じるし、これを皆に読んでみてほしいと勧める。再販していって欲しいなあとも、思うんですよね……
***
さて、ちょっと具合が悪くて臥せってました。3日ほどほぼ起きている時間が無く、今日から出勤。幸いインフルエンザとかではなかったので、実家で厄介になっていました。本当に身内とはありがたいものです…。ネットからも落ちていたんですが、その間文章読んでいただいた方もいらしたようで、これも本当にありがたいことです。癒されます。
…まあ、もともとちょっと、疲れていたんでしょうか。
疲れているときや弱っているときって、昔から慣れ親しんだ世界が恋しくなるみたいです。私の場合はそれが洋画や小説なんですが、最近読んでいるものがこちら↓
『終戦のローレライ/福井晴敏 著』です。全部で4冊。第2次世界大戦、終戦間際の日本の終戦のあり方をめぐる、日本人同士の攻防を描いた話です。勿論、直接に対決するのは、アメリカ海軍だったりするわけだけれども。
福井さんの作品は、『川の深さは』と『亡国のイージス』がとても似てたけれど、ローレライはそうでもない。
一冊目の最後でもう、ひどく、泣けて……
文も話作りも上手い。でも、そんなところに泣けるんじゃないのね。征人っていう17歳の主人公が激戦の中にあって、「戦争で命を賭ける意味ってなんだろう」ということを追いかけることがテーマなんだけど、そのことに精緻な文章で、インパクトのあるエピソードで引き込む。だから感情移入して自然と泣けてしまうんですよ。
例えば、泣けてしまった一冊目の最後のあたりをご紹介すると。
征人という海兵は、なんてことない青年なんだけど、ちょっと特技があったために、ある特殊な任務の重要なファクターとして潜水艦の補欠乗員になるのね。潜水艦に乗船する前に、その特殊な任務をどうしても妨げたい米国の戦闘機と、乗組員を積んだ小船の戦闘になるんです。ベテランの乗組員のひとりの仲田が、小船に積んだ機銃一本で戦闘機に応戦するんですが、征人やほかの乗組員を逃がすための時間稼ぎに、戦闘機と戦い続けて仲田ひとりは小船に残る。そのときの、征人のこんな気持ち……
『
なぜだろう。なぜ笑えるのだろう。仲田も、あの出征兵士も、自分と違って死を受け入れるに足りるなにかを持っているからか?守るべき家族、妻子。帝国軍人としての尊厳。そうしたものを胸に抱いていれば、死も笑って甘受できるということか?軍人の本壊を果たし、英霊の一端に加わる己の命を了解できるのか…?
わからなかった。わかるのは、その笑みがひどく寂しげだったということ。チョコレート、甘いぞ、そう言った時の声と、死ぬんじゃないぞ、と言った時の仲田の声が、まったく同じ調子だったこと。チョコレート甘いぞ、若いんだからお前食え。死ぬんじゃないぞ、若いんだからお前は生きろ。その瞬間には報国の理念も一死奉公の精神も関係なく、ただあたりまえの大人として口にされたのだろう言葉が、爆音をおしのけて頭の中に反響した。腹の底が熱くなり、征人は無意識に両の拳を握りしめた。
いいのか、それで?
』(『終戦のローレライ/福井晴敏 著』1巻、P216~217)
……言葉も無い……
新兵として放り込まれ緊張してたところに、当時貴重品のチョコレートをくれて優しくしてくれた。でもろくに話したことも無い、会ったばかりの相手。それが、当然のように笑って自分を助けて死んでいく。奥さんだって、子供だって、居たんじゃないのか。なのに助けてもらった自分は役にも立たず、いくら国のため任務のためとかいったって、何のためにこんな危険な目に合うのかさえ、皆目見当もつかない。一体あなたはどうして、と声を嗄らして叫びたい気持ちが、匂ってくるではないですか。
もう本当に、ひとつをとりあげてもこんなに熱くなってしまうほどだから、これは良い本だと思う……消費する本じゃない、人の心の中に何かを訴えて残す、それだけの力のある話だと、私は思います。
変なところもあるけどね。米潜水艦3隻をテストのための捨て駒に使うってホントにありなのかなぁ、とか。
でもやはりお話ってね。「これを訴えたい」という作者の裂帛の気合を感じる作品と感じない作品って確かにあると思うんです。終戦のローレライには、読者を否応無く引きずる力を私は感じるし、これを皆に読んでみてほしいと勧める。再販していって欲しいなあとも、思うんですよね……
PR
この記事にコメントする
カレンダー
03 | 2025/04 | 05 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
27 | 28 | 29 | 30 |
フリーエリア
・『コーネリアを幸せにし隊』隊員1号です(6/1より)。
・広報部長就任ですw(8/2より)
・たまに現れない日がありますが、元気でやってます!・生意気にもスランプ中です(笑)!!!
最新CM
[02/06 秋]
[01/26 秋]
[12/24 秋]
[08/06 秋]
[08/04 秋]
最新記事
(03/04)
(02/29)
(02/22)
(02/14)
(02/12)
最新TB
プロフィール
好きなゲーム:タクティクスオウガ、WA3、サガフロ2、FF7、P2・3、真3等数知れず、 好きな漫画:Monster、百鬼夜行抄等こっちも数知れず
好きなカプ:シュナイゼル×コーネリア(コードギアス)、クラウド×エアリス(FF7)、主人公×美鶴(P3)、他達リサ、オークリ、レヴィナギ等数知れず
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析